魔女のベシーに言い分はある

セラピーについて

広告

空蝉

あと五キロやせたいし、あと、八万円稼ぎたい。

そういうことを思う。 友達も少ないし、家族とは疎遠だ。 恋人はいないし、自由。

自由! 愛情は怖い。泥沼みたいに、暗いところにわたしを引きずり込んでいく。 さあ、手をつないで、と言われて安心した頃から、ずいぶん遠いところまで来た。

「こんなにもしてあげているのに」 「なにを文句を言うの」

そういう人をかわいそうに思って、一緒に暮らしてきた。 でも、一生、その「かわいそう」につきあっていくのかと思うと、怒りがわいた。 十年、二十年と、若い時代を、ただ捧げたことに気がついた。 ロボットみたいに。アンドロイドみたいに。 「あなたの人生を代わりに」「いい人生を生きられるように」と言われてきた。

もう止められない。戻らない。 何かしてもらうことで、代わりに自由を失うなら。

怒りで我を失いそうになる。 でも、怒りとのろいにいっぱいになったら、また十年新しく失ってしまう。

理性で、怒りをコントロールして。 静かに。

そのためには、あの人の、肉声を聞いてしまったら、怒りが抑制できなくなるから。

安心のために。 安全のために。 息をひそめて。 見つからない場所にひっそり隠れて。 逃げ出す。

思い出もいらない。思い出の品に埋もれて生きるよりも、軽く生きる方がいい。

何もかも脱ぎ捨てて重いものはいらない。